宝塚歌劇団のモットーである「清く正しく美しく」は元々、「朗らかに 清く正しく美しく」だった。1934年、東京宝塚劇場の開設に寄せて阪急東宝グループ創始者の小林一三(こばやしいちぞう)が発表した詩に出てくる。東宝グループは今もこの言葉が標語だ▲人に夢を与える朗らかさからも、かけ離れたその実態である。劇団員の女性が昨年死亡した問題を巡り劇団側が、上級生らによるパワーハラスメントを一転して認めた。劇団を傘下に置く阪急阪神ホールディングスは遺族に謝罪したが、パワハラ行為はヘアアイロンによるやけど、人格否定など14項目にも及ぶ。希望にあふれ入団したに違いない故人の心中を思うと胸が痛む▲思えば、誰もが耳を疑った昨年の調査報告での、村上浩爾理事長(当時専務理事)の「(パワハラの)証拠となるものを見せてほしい」との発言だった▲村上氏はこの言動を「恥ずかしい。反省している」と陳謝した。だが、人権を軽んじた組織の対応が批判を浴びたため、重い腰を上げたのではないか。亡くなった女性の妹の現役団員は「宝塚は治外法権の場所ではありません」との悲痛なコメントを公表していた▲小林の著作からは劇団の活動を通じて「朗らかに……」の精神を大衆や国民に広げる理念もうかがえる▲古い上下関係と閉鎖性を抱えるいまの「宝塚」は、その理想から遠い。幕引きを急がず、組織のけじめを自ら考えるべきだ。どんな華麗なショーを演じても、舞台裏が変わらなければ輝きは取り戻せない。
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