「力加減はいかがですか?」「お湯加減はいかがですか?」全国どこにでもありそうな、美容室でシャンプーをされるときの会話。その中で私(耕平)は、何十年も引っ掛かっていた言葉がある。
それは「流し足りないところはないですか?」と聞かれること。
顔にフェイスガーゼを被せられ、何も見えない状態でそんなことわかるわけがない。なのに、なぜ全国どこの美容室でも同じように聞かれるのだろう? と毎回考えていた。
そこで意を決して、通っている美容室の美容師さんに理由を直撃したところ、予想だにしなかった回答が……。
・薄毛専門美容室
その疑問を解消すべく、今回協力してもらったのは、私が通っている吉祥寺にある薄毛専門美容室「RELIVE(リライブ)吉祥寺」だ。
以前にも紹介したが、「RELIVE吉祥寺」は薄毛に見せないカットはもちろん、ヘアセットまで丁寧にアドバイスしてくれる。完全個室というのも、プライバシーが守られているので非常に居心地が良い。私自身、1年以上通っている。
今回この「流し足りないところはないですか?」問題を、美容師歴16年の七尾 祐太郎さんにぶつけてみることにした。
・「流し足りないところはないですか?」と聞く理由
ということで長年の疑問を解消すべく、七尾さんに話を聞いていこうと思う。
耕平「それでは、よろしくお願いします! さっそくですが、美容室に行ってシャンプーしている最中に「流し足りないところはないですか?」と、絶対って言っていいほど聞かれるじゃないですか?」
七尾さん「はい、たしかにありますね。」
耕平「あれって、お客さん側からしたら、わからなくないですか? 顔にフェイスガーゼかけられている状態だし、髪に神経が通っているわけでもないので」
耕平「そこで、お客さんから「ここが流し足りない」みたいな指摘があった経験ってありますか?」
七尾さん「あくまで、これまでの経験の中からの個人的な意見になりますけど、少数ですが無くはないです」
耕平「それって、どんな人ですか?」
七尾さん「ズバリ、年配の女性が多いですね。男性もいなくはないですけど」
耕平「えっ? だって普通に考えたら、わからなくないですか??」
七尾さん「何かヌルヌルしている感覚があるみたいですよ。シャンプーというよりかは、ヘアカラーやパーマのお客様が特に敏感になってますね」
耕平「具体的には、どういうことでしょうか?」
七尾さん「私が聞いたことあるのは、特にヘアカラーのお客様は自宅に帰ってからも髪を流す人が多いらしいんですが、そのときにカラー剤が落としきれないで流れてきてしまうことがあるということです」
七尾さん「なので、それが気持ち悪いと思う人が「もう少し流してほしい」という傾向があるように感じます」
耕平「なるほど……たしかに私も自宅で白髪染めをするときに、十分流したと思ってそのまま気にしないで寝たら、枕カバーにカラー液がついてしまったことが何回かありました。それなら、何となく納得がいくような気がします」
七尾さん「その層が比較的、年配の女性が多いイメージがあるといった感じでしょうか」
耕平「ちなみに、どの美容室に行っても「流し足りないところはないですか?」って、言われなかったことがないんですが、あれは全国的にマニュアル化されているんですか?」
七尾さん「全国的に100%マニュアル化されているかどうかはわかりませんが、少なくても私の経験の中で、この言葉がマニュアルに入っていないことはありませんでした」
耕平「どれくらい前から、マニュアル化されているんでしょうか?」
七尾さん「私が美容師になったときから当たり前のようにあったので、15年以上は存在しているんだと思います。でも今の若いアシスタントなんかは、心の中で「何でこんなこと聞くの?」って、疑問に思っている人も多いんでしょうね」
耕平「たしかに「何でこんなこと聞くんですか?」って、わざわざツッコむ人も珍しいかもしれないですね。結局マニュアル化されているから、余計に機械的に聞こえてしまって「それ必要ある?」って思ってしまうんでしょうね」
七尾さん「あと昔ながらの美容室だと、新人の美容師に対して常連のお客様が、教育する意味も込めて「ここが流し足りない」って言ってくるケースもあるそうですよ」
・こんな考察もあった
以上が七尾さんの見解だが、この「流したりないところはないですか?」問題について、七尾さんを通して先輩美容師の栗田 卓弥さんにも聞いてもらっていた。
栗田さん「これは個人的な経験からの意見という前提になってしまいますけど、この「流したりないところはないですか?」という問いかけは、「もうすぐ、シャンプーが終わりますよ」という合図だとも思っています」
耕平「えーーー!? シャンプーが終わる合図ですか?? それはさすがに頭になかったですね」
栗田さん「あと「流し足りないところはないですか?」という問いかけに対して、「ここが流し足りない」と言ってくる人は1割くらいいると感じています」
耕平「1割もですか?? 思ったより全然多いような……私の感覚だと、いても100人に1人いるのかどうかくらいだと思っていました」
栗田さん「やはり、カラーのお客様が多いですね。あとマニュアル化されている問題で、これも個人的な経験からの意見としてですが、シャンプーが終わる合図と言われているので、全国の美容師さんが使っていると思われます。私の以前勤めていた美容室でもマニュアル化されていたので、30年前からあると思いますね」
耕平「なるほど、ただそれだったらストレートに「もう終わりますよ」って言ってくれた方が、わかりやすいのでは……と思いました。それでは、お忙しい中ありがとうございました!」
──ということで、美容室で「流し足りないところはないですか?」という声掛けについては、あくまで七尾さん、栗田さんの見解であるが、全く意味がない問いかけではないということは、何となく理解できた。
そして今日も全国の美容室で、「流したりないところはないですか?」「いや、ありません」という、やり取りが繰り返されていることだろう。
・今回ご紹介した店舗の詳細データ
店名 RELIVE吉祥寺
住所 東京都武蔵野市吉祥寺本町2-6-8 第3武蔵野ビル2F
時間 平日11:00~21:00 / 土日祝10:00~20:00
定休日 月曜日
執筆:耕平
Photo:RocketNews24.
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