第73期ALSOK杯王将戦七番勝負第3局第1日 ( 2024年1月27日 島根県大田市・国民宿舎さんべ荘 )
藤井聡太王将(21)に菅井竜也八段(31)が挑む将棋の第73期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)7番勝負第3局は27日、島根県大田市の「さんべ荘」で第1日を行い、先手の菅井が45手目を封じて指し掛けた。開幕連勝の藤井が勝てば3連覇に王手がかかるが、1勝を返したい菅井は今シリーズ初の「角交換型振り飛車」を選択。第2日は28日午前9時に再開する。
虚を突かれたわけではないだろう。昼食休憩時の取材に藤井は言った。「あまり想定してない展開です。一手一手読みを入れていかないと」。このカードで初の向かい飛車。しかもその後、角交換が起きる珍しい戦型になった。
居飛車党の藤井と振り飛車党の菅井による今年度2度目のタイトル戦。多数派の居飛車党にとって、振り飛車党との対抗型は経験値が低くなりがちだ。それでもデビュー以来、対向かい飛車の戦績7戦全勝。対菅井戦も対戦成績11勝4敗だが、自らを戒める言葉に慢心の影はなかった。
決戦のにおいが早くも漂ったのが藤井の36手目△7四歩(第2図)。歩の突き捨てから飛先の突破を目指す38手目△8六歩。さらに40手目△5七角の打ち込み。次々と藤井の駒が菅井陣へ突き刺さり、攻めを継続した。
「戦いが始まって判断の難しい局面かなと思います」。藤井の言葉通り、封じ手周辺はヤマ場を迎えている。
第2局の第1、2日から7番勝負3日連続アクシデントに見舞われた。第2局は第1日、藤井の羽織の留め具が壊れた。昼食休憩時、関係者が数珠状の留め具の内部を走るひもを修復した。第2日は扇子が壊れた。風を生み出す扇面が破れ、それを支える親骨と分離したが終局まで使い続けた。そしてこの日は、対局室にカメムシが現れた。
20度を維持した室温は、雪化粧をまとった周辺の生き物にとっても最高の住環境。封じ手後、関係者が駆除して対応した。午後の対局中、その存在に気づいたという藤井は「それは仕方ないですよね」と苦笑い。棋界の全8冠を独占する若き王者は動じなかった。
羽生善治九段が通算100期を目指して挑戦した前期。2勝2敗で迎えた第5局がさんべ荘対局で、羽生の得意戦法、後手横歩取りを打ち破って連覇へ王手をかけた。続く第6局、後手番からのブレークへつなげた。今回も藤井が勝てば3連覇へ王手。今期2度目のブレークとなれば3連覇が自然と見えてくる。
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