編集者A(以下A):信長(演・岡田准一)が斃(たお)れて、わずか11日天下で終わった明智光秀(演・酒向芳)。織田家の跡目は誰がとるのかという段になりました。
ライターI(以下I):本能寺の変では、織田信長に加えて嫡男の信忠までもが討ち死にしていますから、順当にいけば、信長次男の信雄(演・浜野謙太)、三男の信孝(演・吉田朋弘)ということになるのですよね。
A:ただ、信雄は北畠に、信孝は神戸にと両者ともいったん養子に出ているわけです。宿老たちの思惑もあるでしょうし……。先週の第29回のラストで描かれたように、現在の大阪府、京都府の境に近い大山崎の地で羽柴秀吉(演・ムロツヨシ)と明智光秀の決戦が行なわれ、秀吉が勝利しました。両者は織田家中の出世頭でもあり、そのうちの片方が滅亡すれば自然に浮上していく立場。案の定、勝者の秀吉は信忠嫡男の三法師を擁立する立場を明確にします。
I:今週冒頭で描かれた、いわゆる清須会議ですね。事前に池田恒興(演・徳重聡)と談合していたかのような描写でしたね。秀吉が一枚上手ですが、柴田勝家(演・吉原光夫)は、お市の方(演・北川景子)を娶るという形になりました。これはどういう流れでこうなったのでしょうね。いろいろな説がありますが、実際にはどうだったのでしょう。
A: ドラマの中では、これはお市の方が織田家を守るために巡らせた策略で、自身の婚姻をもコマにしたという設定でした。主人公の家康(演・松本潤)が蚊帳の外感があるのはしょうがないですよね。織田家中の問題ですから。
お市の方の再婚から死までの怒涛の展開
I:お市の方と茶々(演・白鳥玉季)、初、江の三姉妹とのやり取りも描かれました。「もしかしたら私たちの父上は徳川殿だったのかもしれないのですね」って、無邪気でいいですよね(笑)。「父が徳川殿だったら初も江も生まれてないんだよ」と突っ込んじゃいました。
A:夫浅井長政(演・大貫勇輔)の死から9年。今度は実家の兄で自身の庇護者でもある信長が亡くなってしまう。3人の娘を抱えてお市の方は途方に暮れている段階です。つくづくお市の方は悲運の女性だと思います。
I:そして、お市の方は、柴田勝家のもとに再嫁するわけです。あらためて考えると、なぜ柴田勝家だったのでしょうか。
A:信長三男の信孝の意向でといわれた時期もありましたが、最近では、秀吉と勝家による話し合いの結果ともいわれています。本作では秀吉がびっくりしていた感じでしたけど。
I:清須会議を受けて、家康家臣団が〈織田家からの天下の簒奪〉〈なんちゅう図々しい猿じゃ〉と口々に罵っていました。
A:「簒奪」というのはもう少し後になって振り返ったら、そういうことだったのかというところでしょうが、この時の徳川家は清須会議に参加する資格もなく、〈図々しい猿〉と秀吉のことを揶揄するしかない立場だったことをうまく表現している場面だと思いました。
【今後のキーパーソンは茶々? 次ページに続きます】
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