将棋の藤井聡太竜王(19)=王位、叡王、棋聖=が渡辺明王将(37)=名人、棋王=に挑戦している第71期王将戦七番勝負第3局が30日、栃木県大田原市の「ホテル花月」で前日から指し継がれ、先手の藤井竜王が135手で勝ち、シリーズ3連勝で史上最年少・4人目の五冠獲得に王手を掛けた。終盤の激戦の末、29手詰めを鮮やかに読み切って偉業に残り1勝と迫った。
死闘を制した直後でも、藤井の声に熱はなかった。恐ろしいほどに淡々と、勝負を振り返るだけだった。「封じ手のあたりはちょっと失敗したのかなと。その後、どう勝負をしていくかという局面が続きました」。熱戦に勝利した直後の心境を棋士が「爆弾処理を終えた後のよう」と表現することがあるが、竜王の声に恐怖を乗り越えた震えはなかった。楽しいゲームを終えた後のような充実感を漂わせるだけだった。
渡辺の封じ手に対し、藤井の大長考から幕を開けた2日目。繊細な攻防が続き、互角の形勢が続いた。終盤、竜王がやや有利となったが王将が勝負手を連発。極めて難解な局面を迎えながら、先に持ち時間が残り6分まで切迫した藤井だったが、正念場で真骨頂を発揮する。局後の談話は全てを証明している。
「終盤、少し足りないと思っていましたけど、飛車を取った手が際どく詰めろになったので、そのあたりで好転したのかなと」
言及した局面で後手玉には29手詰めが生じていた。残り時間は3分。自玉も危険にさらされ、駒台には歩しかない。どんなプロでも読み切るのは困難を極める局面だったが、藤井は唯一の正解を指し続けて渡辺の王将を討ち取った。
どれだけAI研究が進んでも、分岐の果てにある終盤戦で頼れるのは自らの力でしかない。今回も最後の最後に藤井が自らを救ったのは幼い頃から研鑽(けんさん)を積んできた詰将棋の能力以外の何物でもなかった。
一気の3連勝で王将奪取に王手を掛けた。羽生善治九段、中原誠十六世名人、大山康晴十五世名人の3人しか達成していない五冠。史上4人目、そして1993年に22歳10か月で達成した羽生の年少記録を29年ぶりに塗り替えるまで残り1勝となった。2月11、12日に行われる第4局の前には、A級昇級が懸かる順位戦B級1組の阿久津主税八段戦も控える。栄光への冒険は続く。
取材後の感想戦。藤井の声はいつものように…いや、いつもより楽しげに聞こえた。最高の相手と将棋の深い場所で戦い続けられたこと。19歳には、勝ったことよりうれしかったのかもしれない。(北野 新太)
〇…後手番ながら中終盤を有利に進めた好局を落とした渡辺は「(形勢の良し悪しは)難しいと思っていたんですけど…」と振り返りながら、次局に向け「やることは変わらないので、次が特別に何かということはないです」と述べた。2008年度の竜王戦七番勝負で将棋界初の「3連敗4連勝」をやってのけたこともある第一人者。先手番の第4局でまずは1勝を返し、流れを変えたい。
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