将棋の最年少5冠、藤井聡太王将(竜王・王位・叡王・棋聖=20)が羽生善治九段(52)の挑戦を受ける、第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第5局が25、26の両日、島根県大田市「さんべ荘」で行われる。第4局を終えて2勝2敗のタイ。初防衛、5冠堅持を目指す藤井か、前人未到のタイトル獲得通算100期に挑む羽生か。どちらが勝っても「王手」となる。両者は前日検分後、意気込みを語った。
東京都内で行われた第16回朝日杯で2年ぶり4度目の優勝を果たし一夜明けた24日、藤井は島根県に移動した。強行軍にも「(疲れが)まったくないかは分からないが、対局の間隔が空きすぎても、ペースがつかみづらい。いいペースでできている」と気丈に答えた。
第4局では先手番の羽生が藤井の得意とする戦法「角換わり腰掛け銀」に挑み、快勝した。大一番は藤井が先手番となる。現在、未放映のテレビ棋戦を除いて先手番は26連勝中と「鉄壁の先手番」だが、「第4局は長考した場面で間違えてしまった。第5局ではそういうことがないように集中して指したい」と反省を糧にする。
今回は後手番となる羽生は「後手番となった第1局も第3局も自分の形勢が良かったという瞬間は、一瞬もなかったはず。今回は少しでもそういう場面が作れたらいいな」と分析結果をベースに突破口を見つける。今シリーズは両者とも後手番での白星はないが、羽生は第1局では意表を突く一手損角換わりなど「藤井対策」をぶつけてきた。第5局の“秘策”について「どういう展開になるか分からないが、考えている作戦をできれば」と言葉に力を込め、「仕切り直して、改めて3番勝負。このシリーズの大きな分岐点になる」と“短期決戦”に挑む。
藤井は「1局1局が大事になってくるが、スコアを考えても仕方がない。最初から最後まで盤上に集中したい」と静かに語った。【松浦隆司】
<過去4局の対局VTR>
◇第1局(1月8、9日、静岡県掛川市「掛川城二の丸茶室」) タイトル戦で初顔合わせとなった両者の開幕局は、後手の羽生が一手損角換わりで意表を突いた。対する藤井は冷静な対応を見せてリードを広げて押し切り、初防衛に向けて好スタートを切った。
◇第2局(1月21、22日、大阪府高槻市「山水館」) 相掛かりで挑んだ先手の羽生の積極的な指し回しが目立った。藤井陣の8筋に金を打ち込んで踏み込む。最終盤は藤井の10連続王手に対し、これしか自玉は助からないという最善の受けで応じ、1勝1敗に。
◇第3局(1月28、29日、金沢市「金沢東急ホテル」) 後手羽生がレトロな「雁木(がんぎ)」を採用した。対局直後は振り飛車もにおわせるなど、変幻自在な指し回しを見せた。2日目になりまとめ方をとがめた藤井が、後手玉の上部脱出を阻み快勝。午後4時10分の終局は、藤井の過去7局の王将戦で最速決着。
◇第4局(2月8、9日、東京都立川市「SORANO HOTEL」) 先手の羽生が角換わり腰掛け銀に命運を託し、意欲的に踏み込んだ。封じ手で意外な応手を見せた後、意表を突いた銀のタダ捨ての受けを見せた藤井の不備を突いて攻めきった羽生が2勝目。終局は午後4時3分と、これまた早かった。
◆王将戦 1950年(昭25)に一般棋戦として創設。翌年からタイトル戦に。8大タイトル(竜王・名人・王位・叡王・王座・棋王・王将・棋聖)の序列7番目。1次予選、2次予選はトーナメント。2予の勝ち上がり3人と、シード棋士4人の計7人による総当たり戦を例年9月から年内に開催し、成績最上位者が挑戦権を得る。同星の場合は原則、順位上位の2人によるプレーオフ。2日制の7番勝負は例年1~3月に、全国を転戦する。96年開催の第45期には、羽生善治6冠が谷川浩司王将(いずれも当時)に4連勝。叡王を除いて、当時あった7大タイトル全制覇を達成した。
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