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『舞いあがれ!』第20週は恋愛ミステリーのような趣に 朝ドラだから描けた人間の“揺れ” - リアルサウンド

  “朝ドラ”こと連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合)は、どうなることかとやきもきした控えめな舞(福原遥)と貴司(赤楚衛二)がついにお互いの思いを確かめあった。貴司の思いを短歌から読み取っていく恋愛ミステリーのような風情に趣を感じる。なかなか本音を話せず、控えめでつつしみ深い現代人への応援歌かつ、考察ドラマが好まれる時代にもふさわしいエピソードであった。

 貴司の心の真実を発見する探偵は、編集者・リュー北條(川島潤哉)と短歌を愛する孤独な秋月史子(八木莉可子)である。北條は貴司のなかにくすぶっている炎があることを見抜き、史子は恋とは無縁のように見える貴司が唯一、恋の歌を本歌取りをして書いていることを見抜く。

 舞の部屋を訪ねた史子は、貴司の恋の歌「君が行く 新たな道を 照らすよう 千億の星に 頼んでおいた」が書いてあるはがきに気づき、貴司が誰に恋しているか知る。この場面は、まさに探偵が真実にたどりついたわくわく感があった。『短歌探偵・秋月史子』という物語を、夜ドラあたりでやっていただきたい。

 北條と並び、舞と貴司の奥手な恋を後押しする名アシストしたお手柄の史子であるが、ネットでは評判が芳しくない。「こわい」「ストーカー」とドン引きされた。舞の家にまで訪ねてくるのはかなりやり過ぎではないかと。筆者の知り合いの編集者さんがメールで「踏み込み過ぎている」とやはりこわがるので、「なるほど、史子=踏子」と気がついた。

 だが、思えば、朝ドラのヒロインには史子のような人物が少なくない。思い込みが激しく、積極的に他者に踏み込んでいき、やりたいことをどんどん実行し、ほしいものを獲得していくキャラで、そういうところを多くの視聴者に批判されることが朝ドラの歴史上、繰り返されてきた。直近では『ちむどんどん』の暢子(黒島結菜)がそうである。ほかに『まれ』や『半分、青い。』や『なつぞら』のヒロインが唯我独尊キャラと言っていいだろう。なぜ同じ轍を踏む? と首をかしげるのだが、「自由」をベースにするとそうならざるを得ないようだ。その究極は夜ドラ『ワタシってサバサバしてるから』(NHK総合)の自分をまず大事にするヒロイン網浜奈美(丸山礼)であろう。朝ドラはそこまで行き過ぎないようにぎりぎりとどめてはいるのだが、それでも毎度、ヒロインのマイペースさが批判にさらされる。

 自分本位の嫌われヒロインへの反省をついに生かしたかのような主人公は『おかえりモネ』のヒロインである。「わたし、なにもできなかった」と過去を悔やみ、なにも言えなくなってしまう。それを引き継ぐのが、『舞いあがれ!』幼少期の舞である。だが、他者のことを気にしすぎるあまり、思ったことが言い出せず、熱を出して寝込んでしまう舞は、五島で解放されて少しずつ変わっていく。大学生になると、いわゆるやりたいことを好きなようにやるヒロインらしく成長する。大学中退して航空学校に入学し直し、大事な試験中でも恋をし、リーマンショックのせいもあるとはいえ、あんなに夢見たパイロットの夢も恋人よりも実家の会社の立て直しを選ぶ。そんなふうにその瞬間、その瞬間、心のままに突き進んでいく姿にやっぱり視聴者は戸惑った。

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